事例発表:九州産業大学 人間科学部 臨床心理学科 教授 倉知 延章 先生
私が全国精神保健職親会の賛助会員となったのは10年程前。ジョブメンターという冊子(編集注:本誌の前身)との出会いだった。 それから数々の研修会等でお世話になり、現在は正会員として定例連絡会にも参加させていただいている。福岡ワークショップはオンライン開催となったが、 自分が就労支援を学ぶきっかけになった方たちと画面越しの再会を果たすことができた。以下、特に印象に残ったことを記す。
福岡でのワークショップは、2021年9月に福岡市からの配信(当初予定では、会場とWeb配信のハイブリッド形式)となった。
○アセスメントは、本人のニーズ実現に向けて必要なサービスを提供するために実施するもので、就労能力や適性、可能性を決めつけたり、特定のサービスに振り分けたりするためのものではない。
○就労支援にかかる人材育成・確保のため、基礎的研修やその後の階層研修などの制度を創設する必要があり、「公的資格」を位置づける検討も必要。
○当事者の働く場を広げ、雇用の質も高めるには支援職の力量が問われる。企業も支援を求めている存在であるとの理解が必要で、「働けるかどうかを判断する」支援ではなく、「どうすれば働けるのかを考える」支援への意識転換も必要。
○特別支援学校からの実習受け入れから雇用につながったAさんは、2年生時の実習に加え、3年生時にも得意とすることを長期間実習した。その結果、即戦力として入社を迎える事ができた。
○同業者の依頼で入社したBさんは入社後に発達障害が分かった。いくつか業務トラブルが起こっていたが、家族との面談、社員との面談、専門機関への相談を繰り返し、本人の気持ちも確認するなど、模索しながら具体的な対応や配慮事項を見出していった。
社長の経営理念に基づく信念が社員の心を動かし、本人の能力を引き出すだけでなく、社員の成長にもつながっているというエピソードは、参加者に深く刺さったように感じた。
進行役の温かいファシリテーションで本音の話し合いができた。私もこの会での学びを生かし、一人一人の多様な経験が生かせる職場、個性をチームの強みとして生産性を上げ成果を出せる職場作りを目指し、一人一人のキャリア形成・職場環境整備の仕事に関わっていきたい。